2006-08-19

カイカイキキ「奇々怪々」とダ・ヴィンチ

Posted by Picasaphoto:里芋の葉


村上隆の芸術起業論を一通り読み終えて思ったことがあった。
自身の語るエピソードの中には日本人が羨望の眼差しでしか捉えない世界のビッグネームが随所に出るが、その中でも「ルイ・ヴィトン」が際立って印象に残った。世界的ブランドの代名詞のようなルイ・ヴィトンとコラボレーションし、尚且つ営業でも成果を残した、という手腕にムラカミの辣腕ぶりを証明している。
これまで日本人が、その羨望とする「核心に触れた」という歴史が過去にあっただろうか。欧米追随を規範として日々邁進してきた日本人が、現在も追っているのは欧米であり、追いついている筈のオウベイは蜃気楼のように逃げ惑う。それは追いかける日本人の姿勢の問題であり、蜃気楼にしてしまっているのは日本人自身であり、そのことを誰も指摘しないこと自体が日本的なのである。
それを本気で実証したのが彼であり、「だったら翻訳してみろよ」と妬み論者に問いかけるのだ。相変わらず悪しき因習で認めようとしない「権威者」が支配する美術界は村上隆を異端と見ているのだろう。だったら世界から見た日本自体が異端である。
映画「ダ・ヴィンチ・コード」、今となっては誰も話題にしないが、西洋絵画の巨匠そのレオナルド・ダ・ヴィンチと手を組んだ唯一の日本人が村上隆ではなかったのか。世界ブランドのルイ・ヴィトンは西欧歴史の中でも「ギルド」制度を匂わせる老舗企業である。そうしたヨーロッパの保守的伝統を継承した企業と日本の伝統文化を素地にした村上アートがコラボレーションしたことが革新的である。
判っていながら誰もアクションを起こさなかった、だから自分がした、と村上隆は聡明な理論を展開する権威者に痛烈なボディーブローを見舞った。それでも現実世界、日本のアートシーンはテコても動かないだろう。
下積み時代にコンビニで売れ残った弁当で食い繋いだ村上隆を「師」を仰ぐ美術界の長老が、この日本に存在するとは絶対に思えない。

2006-08-15

村上隆 芸術起業論を読んで

念願の「芸術起業論」が8月14日、手に入った。本の裏を覘いて人気の度合いを知る。
2006年6月25日第一刷、8月10日第5刷発行と明記してあるから、出来上がったばかりの第五刷が届いたことになる。ロット部数にもよるが、この数字から推測すれば売れに売れている。最近の新初刊では異例の売れ筋と思った。本の内容がそれを物語っている。
おせっかいに解説すれば、この本はアートを目指す若い人たちへのメッセージマニュアル書である。そして通常日本で出来上がった既成概念打破の理論書でもある。
「web進化論」の中で梅田氏が力説していたエスタブリッシュメントたちへの痛烈批判、それと同次元のアンチテーゼである。日本の社会を支配している目に見えぬ思想、その根拠がどこから発生しているのか、という設問自体にも応えられない彼らに対する反逆であり追求、そして革命的なアクションである。生半可な青臭い絵空事を云うのではなく実践して成果を挙げリアル社会で稼動している姿を何人も阻止することができない。当然のようにエスタブリッシュメント層には、そのことが何を意味しているのか、それすら理解できないだろう。かの村上隆は、そういう人たちの理不尽な要求をすべてクリアーして今のスタンスを築いた。本は、そのことを淡々と語っている。
ただし、この本が若きアーティストにとってマニュアルではあるが、それをなぞっているのであれば真のアーティストになれない、ということも村上隆は教えている。
二人目のアンディーウォーフォールを誰も評価しない、ということを暗黙のうちに語っているのが印象的であった。

2006-08-13

古典的絵画

                  













Posted by Picasa photo:蓮沼村五所神社の絵巻
8月1日に参拝した五所神社 には、目もくらむばかりの装飾が至る所に配されていた。
普段は人気もなく静まり返っている境内、辺りの田園風景と、その豪華絢爛たる社殿内の見事な彫刻と絵画群がマッチしない。
絵を見て判る通り、それは朝廷絵図であり現代的表現で云うなら都会的である。

2006年のいま、インターネットデジタル社会が既存の商業形態を凌駕しようとしている。それはごく限定的な出来事ではあるにせよ、時代の大きな潮流はやがて本流となって世界を覆い尽くすだろう。商業資本競争の露骨な戦いは大規模に進行して私の住む町でも億単位の事業展開が進んでタンボのど真ん中に量販店がオープンした。そのトリミング風景は五所神社の朝廷絵巻図とまったく同等である。
そして、そのどちらに価値があるのか、という問いは無意味でありながら百年、二百年後の形骸化した概念と残された質的物体の持つ意味が、人々に訴えかけるだろう。
何がいま必要とされそして大切であるか、その時代に生きている人間は自ら盲目である。

雷雨のあと

Posted by Picasa photo:8月12日の夕焼け

8月12日は千葉県に雷雨注意報が出て断続的に雷と雨が激しく停電もあった。その夕方の空は絵に描いたような景色が展開してその時思わず撮った写真。